三澤浩二さん(美術学科87卒)の作品展が3月28日から4月2日まで行なわれていました。三澤さんの作品は抽象絵画です。ギャンバス内に規則正しく正方形が配置され、色彩は補色関係にある緑と赤により画面が構成されています。三澤さん作品から、パウル・クレーやモンドリアン、カラーフィールド・ペインティング等から作品を読み取れ感ずる事ができます。
しかしそれ以上にこの作品はある「深み」を持っています。「深み」とは三澤さんが制作する顔料の成分により作られています。
ヨーロッパ絵画は、絵画(平面)に私たちが見えている世界そっくりのものを描き出そうとし遠近法を開発しました。その当時の人々は大変驚いたに違いありません。今で云うなら3D映画の体験か、それ以上の事であったと思います。しかしその遠近法的具象絵画からの脱却で、抽象画が生まれてきました。そこには遠近法から「深み」という絵画独自の空間の一つが生まれてきたと思います。
三澤さんの作品にはこの「深み」を探求している様子がうかがえます。残念ながらこの「深み」体験するには、実際作品の前にたち作品を経験するしかありません。
作品の特徴とし、一般的にキャンバスにジェッソな下地を塗り重ね、基底を作るのですが、この作品は暗布を基底としています。それは作品に大きな影響を与え、効果を計算しての作業であるという事です。三澤さんは山口県在住です。
報告 加藤隆明 教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室

森本由貴子さん(美術学科08卒)の銅版画の個展が4月4日から16日まで行なわれました。
動物と人間の姿を合成したようなあるいは動物の被り物をした身体で表現されています。作家の言葉から作品の重要な要素は「かわいらしさ」であると話して頂きました。
このキーワードは奈良美智氏の作品の要素「かわいい」という概念が、若手アーティストにも浸透してきたことだと思います。では彼女の描く「かわいらしさ」とは何なのでしょうか。作品の多くは擬人化された動物の姿や、人間が動物のお面やコスチュームをつけて登場しています。なぜ人間を動物化するのかの私の質問には、人間は身に着けた装飾品やヘアースタイルでその時代の特性や「かわいらしさ」の記号が成立してしまうのを避けるためと、動物にはファッションという概念がなく、より普遍的に「かわいらしさ」を求められるというような話に聞こえました。つまり、誰かにより作られた「かわいらしさ」には森本さんは拒否しています。
私は、この作品の中には「かわいらしさ」の中にイノセント(清潔、無垢など)が内包されているような気がしました。動物のようなイノセント的「かわいらしさ」が大きなテーマのような気がしています。
野村ルイ子さん(美術学科07卒)の個展が4月4日から9日まで行なわれました。
野村さんの絵画は彩度の高いカラフルな色合いと動物などのモティーフで、ファンシーな画面構成をしています。また、アニメやマンガの表現記号を絵画に導入し、文化を共有している人たちには読み取れる作品となっていました。
この作品を見た時、私は「なんと痛々しいイメージであるか」と感じました。その理由は森の木下に幼児が死体として横たわっていること。手で握ったままの食べかけのリンゴ、そして無数の食べきれないほどのリンゴが、幼児の周りを囲んでいることによって感じることでした。ヨーロッパ絵画では幼児はクピドー(キューピッド)でリンゴはその母アブロディーテ(ビーナス)を連想させます。私には近年母親が育児放棄を行なっている悲しい姿に見えたのです。野村さんはこの絵に関して、リンゴはアイザック・ニュートンの「リンゴが木から落ちるのを見て万有引力を思いついた」ことから発想し、リンゴを食べた子どもに引力が生まれ、その体めがけリンゴが勢いよく降りかかって来たという物語だそうです。この彼女のファンシーな物語は、現代においてむしろ私の作品の読み方よりリアルであるかもしれません。
一見すると女の子らしいというステレオタイプの作品に思えるかもしれません。彼女の制作の発想の原点には、悲惨な近年の大きな出来事を抱え込んでいる事が理解できました。
軽やかでカラフルでかわいらしい動物達のイメージは、実は現実の人間世界の深い悲しみと表裏一体であり、鎮魂の絵画であると感じました。
参加者はuekei、ellie、おまる、こばやん、ササツキ、chiko、名越チゴ、なつやまここみ、No.9、ブッキーの10人。

今回のこの展覧会企画は非常勤学芸員高橋真理子(芸術計画学科06卒)さんです。展示準備の最中お邪魔させて頂きました。今回のこの企画にあたり、高橋さんは大阪府立現代美術センター所蔵の作品を使用し、今までとは異なる視点から展覧会コンセプトを組み上げてきたという事です。数ある収蔵作品の中から版画に注目し、作家に関してはほぼ同じ年代に活躍しながらも異なるアートワールドを作り上げた3人を選び、作品を一堂に集め鑑賞してみようと云う事でした。
池田満寿夫氏は、版画家や芥川賞作家、映画監督、陶芸家等一つの領域にとどまらない多彩な才能の作家でした。横尾忠則氏は、グラフィックデザイナーであり後に画家宣言をした作家です。李 禹煥氏は、日本の現代アート「もの派」の理論的指導者でありました。直島に個人美術館が出来る事でも話題になっています。





